インボイス振込手数料の取り扱いは?売り手負担と買い手負担も

静岡県磐田市の税理士

 

大井 瑛里佳 です。

 

 

インボイス制度がスタートしました。

 

取引はほとんど金融機関を通して行われることが多いですが

 

今回は振込手数料についてまとめました。

 

 

※令和5年11月現在の法令を基に作成しています。

 

 

 

振込手数料の負担はどっち?

 

企業間の取引において、振込手数料は原則として代金を支払う側が負担することとなっています。

 

民法484条、485条に「債務者(支払いをする人)は、債権者(お金をもらう権利のある人)の住所で支払いを行うのが原則である」と

 

定められています。

 

支払う人がお金をもらう権利のある人の銀行口座に代金を入金しなければならず、

 

 

「そのための振込手数料は支払う側が負担する」ということになります。

 

 

企業間が「振込手数料は売り手側が負担する」と取り決めを行っている場合は、売り手側が負担することもできます。

 

 

昔からの慣習で特に取り決めがなくても振込手数料を差し引いて入金される場合があります。

 

 

気になるようでしたら、あらかじめ「恐れ入りますが、振込手数料はお客様のご負担でお願いいたします。」など

 

 

一文を添えた方がよいです。

 

 

インボイス振込手数料売り手負担の取り扱い

 

振込手数料が売り手が負担した場合の取り扱いですが、以下の方法があります。

 

 

・売上値引として取り扱う場合

 売上値引として取り扱う場合は、原則として買い手である課税事業者に対して返還インボイスを交付する義務が課されています。

 

しかし、売上に係る対価の返還等に係る税込価格が1万円以下である場合は、その返還インボイスの交付義務が免除となります。

 

一般的な振込手数料については1,000円未満ですので、売上値引きとして取り扱いを行う場合、

 

返還インボイスを交付する必要はありません。

 

消費税の負担が増えることもありませんし、事務的な手間もありません。

 

 

ただし、注意点があります。

 

売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、

 

売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率にもとづくため

 

軽減税率8%対象の課税資産の譲渡等を対象とした振込手数料相当額の売上値引きには、軽減税率8%が適用されますので

 

ご注意ください。

 

 

インボイス制度がスタートする前は「支払手数料」で計上していた方が多いと思いますので

 

令和5年10月1日以降も「支払手数料」を使用し、消費税コードを「売上に係る対価の返還等」を使用する形が

 

よいかと思います。

 

 

・課税仕入れとして取り扱う場合

 

 振込手数料を売り手が負担する振込手数料相当額を、課税仕入れとして処理する場合には

 

 金融機関や買い手から受領するインボイスが必要となります。

 

 もし、買い手もインボイス発行事業者である場合なら、振込手数料も記載した仕入明細書を交付して

 

 買い手の確認を受けることで仕入税額控除の適用を受けることができます。

 

 

ほかにも買い手から金融機関のインボイスと買い手が交付する立替金精算書を受け取り保存する方法もあります。

 

こちらは立替金払いで仕入税額控除の対象とする方法ですが

 

買い手の手間が増えるのでおすすめしません。

 

 

インボイス制度が始まる前は売り手負担の振込手数料を課税仕入れにする方法でしたが

 

事務手続きの煩雑さを考えると、売上値引きとして処理する方がおすすめです。

 

 

インボイス振込手数料買い手負担の取り扱い

 

振込手数料を買い手が負担した場合の取り扱いですが

 

振込みの手段によって異なります。

 

 

・ATMを利用した場合

 こちらは交付義務が免除されており、インボイスの交付を行わなくても良いと定められています。

 

 そのため、インボイスを保存する必要もありません。

 

※3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等は、インボイスの保存が無い場合においても、

 帳簿の保存のみで仕入税額控除が出来るというものです。

 

 

インボイスは不要ですがATMで振り込みをした際の振込手数料であることがわかるように、

 

ATMの場所などを帳簿に記載、保存する必要があります。

 

 

・金融機関の窓口、ネットバンキングを利用した場合

 

 こちらはインボイスを保存しなければ、仕入税額控除を受けることができないので

 

 インボイスが必要となります。

 

 金融機関によっては、一定期間の振込手数料について後日インボイスを郵送してくれるところもあるそうなので

 

 取引している金融機関のサイトで確認することをおすすめします。

 (ネットバンキングではサイトからダウンロードできる金融機関もあるようです。)

 

 

令和5年10月1日から令和11年9月30日まででしたら、少額特例の適用を受けるという方法もあります。

 

※少額特例とは

基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が、

少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも

一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる制度です。

 

 

 

振込手数料についてインボイスの交付を受けて保存することが煩雑に感じる方は

 

ATMによる振り込みを選択した方がよさそうです。

 

 

 

このように、今までは卒なく処理してきた振込手数料ですが

 

インボイスが絡むことで複雑になりました。

 

事務手続きの負担を考慮しつつ、ご自分にあった処理方法を選択してみてください。

 

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