静岡県磐田市の税理士
大井 瑛里佳 です。
法人経営されている方や個人事業をされている方で
【経営セーフティ共済】という言葉を聞いたことがあるかと思います。
今回は経営セーフティ共済についてまとめました。
※令和6年10月の情報を基に作成しています。
経営セーフティ共済とは?倒産防止共済との違い
経営セーフティ共済とは、取引先事業者が倒産した際に、
中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度で
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れることができます。
簡単にいうと取引先の経営難に伴って自身も経営難に陥るのを防ぎましょうというものです。
倒産防止共済と何が違うの?と思われる方もいますが
倒産防止共済と同じ意味です。
経営セーフティ共済が節税と言われる理由
こんな経営セーフティ共済ですが
インターネットで検索すると【節税】と出てきます。
これはなぜかというと
経営セーフティ共済の掛金は全額損金または必要経費に算入されるので
節税になると言われています。
また共済契約を解約した場合は、解約手当金を受け取れます。
自己都合の解約であっても、掛金を12ヶ月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、
40ヶ月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12ヶ月未満は掛捨てとなります)。
この掛金については掛金残高が800万円に達するまで納めることができます。
損金又は必要経費に算入できるうえ、貯金もできるという点で
お得と言われています。
経営セーフティ共済のデメリット
いいことだらけな印象がある経営セーフティ共済ですが
注意することがあります。
解約時には解約手当金は益金又は収入として計上することになります。
ですので、解約時にまとまった損金(必要経費)がない場合
解約手当金分がそのまま所得として増加することになるため、税負担も大きくなります。
節税のつもりが節税になっていないという事態に陥ってしまいますので
赤字の事業年度や多額の損金(必要経費)が見込まれる事業年度に解約するなど
解約のタイミングを間違えないよう注意が必要となります。
掛け金が全額損金(経費)になる部分のみ意識がいきやすいですが
お金が入ってくる=所得になりますので、出口部分も意識したうえで検討しましょう。
また、1年以上事業を継続していることや
個人事業主の方は事業所得がある方が要件となっていることと等ルールがありますので
加入を検討されている方は事前に確認しておきましょう。
経営セーフティ共済の前納いつまで?
経営セーフティ共済の掛金ですが、前納(事前にまとめて納付)をした場合、
前納期間が1年(12か月)以内であれば、
全額を支払った事業年度の損金または事業所得の必要経費にすることができます。
経営セーフティ共済の掛金を前納(事前にまとめて納付)したいという方
経営セーフティの前納の期日については中小機構FAQによると以下のとおりです。
①個人事業主の場合
委託機関の窓口で、その年の最終営業日までに加入申込手続きを完了すれば年内の加入扱いになります。
ただし、加入には中小機構による所定の審査があるためご注意ください。
加入時のみ掛金を口座振込で納付することができるので、掛金をその年の必要経費に算入することを希望する場合には、
年内の最終営業日までに中小機構に着金するようにお振込します。
②法人の場合
委託機関の窓口で、その事業年度の決算日までに加入申込手続きを完了すれば事業年度内の加入扱いになります。
ただし、加入には中小機構による所定の審査があるためご注意ください。
加入時のみ掛金を口座振込で納付することができるので、掛金をその事業年度の損金に算入することを希望される場合は、
事業年度内の最終営業日までに中小機構に着金するようにお振込みします。
このように直前まで前納ができますが、万が一のときを考えて
余裕を持って検討・実行した方がよさそうですね。
経営セーフティ共済の改正
お得だよと言われている経営セーフティ共済ですが
令和6年10月1日より改正されました。
特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業
基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業
倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合に
は、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済
契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこととする(所得税につ
いても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和6年 10 月1日以後の共済契約の解除について適用する。令和6年度税制改正大綱より
簡単に言うと
経営セーフティ共済を解約した場合、すぐに再加入はできるけれども
解約日から2年を経過する日までに支払った掛け金は損金になりませんよ
ということです。
本来経営セーフティ共済は取引先事業者が倒産した際に、
中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度であって
節税のために作られた制度ではないのですが
税制上の優遇措置があると理由で加入・脱退を繰り返す人が増えたので
このような改正が入りました。
短期間で脱退、再加入することは可能ですが、税制上ではお得にならないことを
おさえておきましょう。